著者 伊藤計劃
ハヤカワ文庫
この本はすっごくお勧めだよ。
そんなに面白いんですか?
小説初心者でもスラスラ読めると思うよ。作者の本全般に言えることだけど文章も構成もわかりやすい。
どんな内容なんですか?ハーモニー?調和って意味だよね。
あらすじ
調和:うまくつり合い、全体が整っていること。いくつかのものが矛盾なくお互いに程よいこと。
ユートピア:トマス=モアの造語で、どこにもない良い場所のこと。想像上の理想的な社会。理想郷。
21世紀後半、〈大災禍(だいさいか)〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉構成社会を築き上げていた。
医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけのやさしさや倫理があふれる“ユートピア”。
そんな社会にいやになった3人の少女は餓死することを選択した。それから13年。
死ねなかった少女は、世界を襲う大混乱の陰にただ一人死んだはずの少女の影を見る。ユートピアの臨界点。
ハーモニー 背表紙 あらすじ
この書籍で重要な設定が“WacthMe“と呼ばれる人間一人一人に埋め込まれたメディケアで体調管理やあらゆる体の情報をコンピューターにつながっている感じなんだ。
じゃあ病気知らずですね。病気になったとしても“wacthMe”が細菌の抗体を作り出してくれるんですね。
ちなみに“WacthMe”が体に埋め込まれるのは大人からって設定だよ。子供は大きな成長の変化があるから適さないとされているんだ。
だから主人公たちは餓死することができたんだね。
この本書の中の世界は優しさで満ち溢れている。まず公園の遊具の素材が鉄製のものは一切なくし、柔らかい自立する素材に変えてしまったんだ。
細部に至って世界は安全を確保した。だけどやっぱり”WacthMe”が一番の功績だね 万能薬を作り出すことができるし、全身を絶え間なく監視して私たち自身の体が動かなくなるまで(寿命)健康に保てることができる。
それは、”WacthMe”をつけている人の外見も同じものとなる。
日焼けしている人はいない、太りすぎている人も痩せすぎている人もいない。
個性が死んでいる。まあ骨格は違うけどね、でも、みんな同じ顔色だ。
全ての情報をコンピューターに明け渡して、人々の間にもだれかれ構わずに関心が芽生えた。そして、みんながやさしくなったんだ。
そこで本書で登場する3人は疑問を持ったんだ。
生気を抜かれた健康さ、とでもいうべき表情。この国に生きている人間は限りなく死人に近い生者のように見える。
生物にとってこのおせっかいな”WacthMe”は必要なのかと……。
そこで3人の中の少女の一人が、栄養を一切受け付けない薬をほかの二人に渡す。 子供は“WacthMe”がないため、大人たちを出し抜くことさえできればよいと考えた3人は餓死をすることを誓う 。
この不気味な世界で子供3人の死を武器に打撃を与えるためにね……。
しかし、実際には話を持ちかけた少女だけが死ぬことができた。
なぜほかの二人は死ぬことができなかったのか?その理由は一人が死ぬのが怖くなり大人たちに計画をばらしたんだ
それで残り一人はぎりぎり助かった。
その一命をとりとめた一人は後ろめたさを覚えながら13年の月日が流れた世界の話なんだ。
なんかあらすじと被った感じがあったけどまあいいか(笑)
後の続きは本書を読んでほしいな
気になりますね…もやもやします
本書の読む心構え
SF小説の読み方で重要なのは、小説の世界の中にどっぷりつかり考えることなんだ。
別に読み方の解釈が作者と会う必要はないよ
僕だって本はたくさん読んでいるけど、誤読なんてかなりあると思うしね。
この本書の考える点はやっぱりユートピアの存在だよね。
歴史は言葉や文字を受け継いで伝えられてきたけど、人類は戦争を繰り返しあたかも何も学ばなかったかのようにふるまってきた。本書も書かれているけど
歴史が伸びてゆけば行くほど、学期内という物量的な限界のために、多くの歴史がどんどん圧縮されていく。
千年後の歴史の授業を想像して……略~ 私たちなんて一分も扱われればいい方。これほど何もない時代にすっぽされても仕方ない。
歴史が無限に伸びていき、わたしたちの時間は要約され、さらに要約され、やがて圧縮されすぎて消えてしまう。
ハーモニー P160
要はどんな悲惨なことがあっても、時間がたてば薄れ、その間の出来事によって省略されすぎて形がなくなっていくってことなんだ。
この言葉はかなりしっくりくるよね。
まあ~要約されなければ今の歴史の教科書があんなに薄いはずがないしね。
そこで今までの悲惨さを凌駕する事件が起きた〈大災禍(だいさいか)〉だ!!
この事件で世界のあらゆる人々にトラウマ級の大打撃を与えた。
だから、この事件が終わってみんなが話し合ったんだ
どっちにかじを切るかを選ぶ必要が出てきた幸福を得るか、真理を得るかをね。
この世界では幸福を選んだんだ
コメント