【書評】すばらしい新世界

小説

著者 オルダス・ハックスリー

西暦2540年。人間の工場生産と条件付け教育、
フリーセックスの奨励、
快楽薬の配給によって、
人類は不満と無縁の安定社会を築いていた。
だが、時代の異端児たちと未開社会から来たジョンは、
世界に疑問を抱き始め…驚くべき洞察力で描かれた、
ディストピア小説の決定版!

「BOOK」データベースより

古典とまではいかないけれど、この小説が発表されたのは1932年。

時代でいうと第二次世界大戦がはじまる前の作品だ。

著者は第一次世界大戦を経験し、戦争を経て、かくあるべくしてこのような内容になったのだろう。

世界観を形作られた経緯

西暦2049年に「九年戦争」と呼ばれる最終戦争が勃発し、
その戦争が終結した後、全世界から暴力をなくすため、
安定至上主義の世界が形成された。
その過程で文化人は絶滅し、それ以前の歴史や宗教は抹殺され、
世界統制官と呼ばれる10人の統治者による『世界統制官評議会』によって支配されている。

最終戦争で人々は痛みを学び、極端な世界ができた。

主な登場人物

バーナード・マルクス
階級 アルファ・プラス
本来の階級はアルファ・プラスではあるが、培養ビンのときに職員の手違いでガンマ階級の姿で生まれてしまったため、劣等感に苦しみ、孤立している。

ヘルムホルツ・ワトソン
階級 アルファ・プラス
アルファ・プラスの中でも群を抜いて外見が良く、かつ非の打ち所がない社交家
優秀すぎるために孤立している。

レーニナ・クラウン
階級 ベータ
センターのアルファ階級男性のほぼ全員と寝たことがある美女

ジョン・サヴェジ
階級 なし
蛮人保存地区の生まれで主要人物の中では、唯一母親の胎内から生まれた
シェイクスピア(この世界では禁書)の全作品を愛読している。ゆえにこの世界以前のことを知っている。
そして、文明社会に行き、周りから好奇な目を向けられる

ムスタファ・モンド
階級 不明
西ヨーロッパ駐在統制官で世界統制官の一人
昔の世界を良く知っている人物

この世界での暮らし

まず人が生まれる過程から現代とは違ってくる。

人は母親の胎内から生まれるのではなく、培養ビンから生まれる?ではなく

製造と選別で出来上がると考えたほうが感覚として近い。

製造の段階で、人の能力も階級ごとに体格、知能までも決定される。

そして、階級に合った仕事だけをこなす毎日

この世界には向上心は不要だ。

というか、あってはならない

自分に与えられた仕事だけをこなしていればいい。

仕事終わりに配られる「ソーマ」と呼ばれる薬で「楽しい気分」になる。

個々の住人は、激情にかられることはなく、常に気分は安定して状態。

そのために社会は安定している。

この世界は、家族という概念がない。

結婚は否定され、人々は常に一緒に過ごして孤独を感じることはない。

隠し事もなく、悩みも嫉妬もなく、誰もが他のみんなのために働いている。

ここは「すばらしい世界」なのだ。

重要な用語・設定

カースト制

アルファ、ベータ
知識人、指導者階級
顔は整っていて、スタイルが良く、知的な教育を受けている

ガンマ、デルタ、エプシロン
労働者階級
下の階級に生まれた人間ほど、容姿が悪くなる
ひとつの受精卵から大量に子どもを作る方法を使用しているため、差ができてしまう。

睡眠教育法

睡眠時に同じ言葉を繰り返し語ることによって行われる教育

この教育は死ぬまで忘れることはないとされている

言わば、最強の睡眠学習だ。

ソーマ

安定した社会維持のために必要な麻薬

副作用は一切になく、麻薬と宗教の役割を果たしていて、

階級問わず誰もが幸福感を保って毎日を過ごすことができる

感想

この本はシェイクスピアの本からの引用が多く、読みやすい本ではないことは確かだ

しかし、おもしろい。

不安な要素をすべて取り除くと、このような世界になる。

現実離れしているようだけど、そこまで外れてないようにも思う

この世界の人々は多分、幸福だ。

社会は安定し、欲しいものは手に入る。

そして、手に入らないものはみんな欲しがらない。

ソーマがあればすべてをリセットしてくれる。

この世界の住人は何も知らない。

母親も父親も妻や子供や恋人などという、激しい感情の種になるものは一切知らない

ゆえに、社会は安定で安全だ。

本の最後に、蛮人保存地区の生まれのジョン・サヴェジと

世界統制官の一人ムスタファ・モンドの話が特に面白かった。

幸福とはと考えさせられる一冊だった。

「幸福になれる答えがない」だから僕たちは手探りでも探すのだ。

あなたはこの世界がユートピアだと思いますか?

興味のある方は読んでみてはどうでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました