【要約・書評】もっと！

著者　ダニエル・Z・リバーマン
　　　マイケル・E・ロング
　　　梅田智世　訳

インターシフト

今日は紹介する本は

もっと！　愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学

著者の経歴
ダニエル・Z・リバーマン
・ジョージワシントン大学の精神科医・行動科学部教授
・クリニカル・アフェアーズ副会長
・アメリカ精神医学会の特別研究員

マイケル・E・ロング
・ライター、スピーチライター、脚本家

ドーパミンは、私たちに人間らしさを与える神経伝達物質だ。

ドーパミンが作る細胞は、脳神経細胞のごくわずかしかないにもかかわらず

人類の進化や僕たちの生活に至るまで大きく影響している。

それは、愛であったり未知の世界に足を踏み入れる冒険心

神の創造・テクノロジー・成功などに駆り立てる力の源も

ドーパミンのおかげだ。

ドーパミンは長年「快楽物質」と呼ばれ、

報酬という刺激によって満たされ快楽をもたらすとされてきた

しかし、それは適切ではなくドーパミンは「報酬予測誤差」にかかわっていることだ。

ドーパミンの癖がわかれば、人生のヒントとなってくれる。

例えば、愛が長続きしないのはドーパミンが深くかかわっているからだ。

それでは、書評をしていきましょう♪

要点

・ドーパミンのおかげで未来に期待が持てる
・ドーパミンのせいで、愛が長続きしない
・快楽が満たされなければ、依存への道に行く
・H&N（ハウ＆ナウ）が愛を長続きさせる

ドーパミンのおかげで情熱的な愛を持つことができる。

遠くにあるもの、まだ手に入れていないものは、使ったり消費したりすることはできない。できるのは欲することだけだ。ドーパミンには極めて明確な仕事がある。未来に手に入れられる資源を最大化し、より良いものを追い求める。

もっと！　愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学

報酬予測誤差

報酬予測誤差とは、予想外のいいニュースがもたらすぞくぞくするような快感にある。

例えば、過去に歩いた道で、突然おいしそうなパン屋が開店していることに気づく、

あなたはたちまち、店に入って商品を見たくなる。これがドーパミンのなせることだ。

まだ、その商品を味わってもいないのに、想像だけで期待する。

他には、

ふらっと入った古本屋に、前から欲しかった絶版本があったり

街でばったり会った美男美女。

これらはまさに恋に落ちたようなもの。

ドーパミンが生む興奮だ。

マンネリ化

期待していたものは長続きしない。

彼氏彼女と初めてされた、サプライズはドーパミンを最高に高めてくれる。

しかし、そのサプライズがおなじみのモノになったらどうなるか。

目新しさを薄れ、ぞくぞくするような感情は、おなじみの退屈な日常になる。

ドーパミンのダークサイト

マンネリ化を止める方法はある。

それは、サプライズの質を上げ続けることだ。

どこまで前よりももっと！だ。

これが、愛が長続きしない原因だ。

情熱は必ず冷めてしまう。

そして、予測誤差を超えるものを追いかける

それは、浮気なのかモノなのかは人それぞれだろう。

これは別に愛に限った話ではない。

スマホゲームがわかりやすいだろう。

ガチャでほしかったキャラクターが手に入った。

あなたは満足だ。

しかし、運営側はもっと強いキャラを制作している。

ゲームを進めていく過程で強敵も増え、

今よりももっと強い武器・キャラクターが必要になってくる。

そして、またキャラクターを手に入れるために課金をする。

ドーパミンに上限はない。

予測誤差の超えるために、もっとを欲しがる。

愛を長続きさせるH&N

H&N（ハウ＆ナウ）今ここという意味だ。

目の前にあるものをあなたに体験させてくれる。

そのおかげで今目の前にある料理を味わったり、

家族のぬくもりを感じたり、

楽しんだりすることができる

愛の探索に求められるスキルは、愛の維持に求められるそれとは別物だ。

もっと！　愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学

愛を継続するには、探求から所有になる。

期待してドキドキしていたのとは違い、大切に世話をしなければいけないものだ。

魅力は魔法

ドーパミンの探求は終わりがなく、もっとを常に欲しがる。

情熱があるときはどんなことにも魅力があるものに見える。

まさに魔法のようなものだ。

ではどうするのか？

魔法を一つずつ解いていくことだ。

未来を現実に近づけることが大事になっていく。

ドーパミンもH&Nもどっちも大切

ドーパミンは一見すると厄介だ。

愛は長続きしなくなり、刺激も常にもっと！を求める

なんて、手のかかるものなのか。

しかし、ドーパミンがなければ、未来を期待しなくなる。

つまり努力をしなくなる。

朝目が覚め、ベッドから出る必要が感じなければ

ずっとそこで寝てるし

異性との出会いを期待しなければ、人はどこにも行かないし

絶景を見たり、旅をする体験もしなくなる。

ドーパミンがあるから、僕たちを人間たらしめる。

ドーパミンの２つの回路

ドーパミンには２つの回路がある。

１つは「欲求回路」

生存や生殖につながる行動を促すために進化したものだ。

何かを求め、「あれがほしい」というモチベーションの感情を引き起こす。

欲しいものが手に入れば、欲求は満たされ、次に同じものを得ても喜びは少なく

驚きもなくなる。

２つ目は、「制御回路」

欲求の回路を抑制し、計画・戦略を練って、

僕たちが想像している未来へと連れていく手立てを与えてくれる。

長期的な勉強、飽きなく努力をもたらしてくれるのも同じ回路だ。

どっちを満たせるのは芸術だ

創造は、ドーパミンとH&Nを混ぜ合わせる優れた手段だ。～木工、編み物、絵画、装飾、裁縫は、現代の世界ではあまり関心をひかない古風な活動だ。けれども、ポイントはまさにそこにある。これらの活動を通じて新しいものを生み出すためには、脳と手を連動させることが求められる。

もっと！　愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学

作品は自分の中で、完成した未来を想像する。

それを実行するために計画し、そのあと自分の手を使って現実のものにする。

少し前に大人のぬりえが流行った理由もここにあるだろう。

料理やDIY、スポーツも、知的な刺激を身体的な動きを兼ね備えて

完成させることで、満足感を与えてくれる。

そして、そうした活動は古臭くなることはなく、生涯にわたって追及していくことができる。

高級な車、時計・絶世の美男美女を手に入れても、

数週間はドーパミンによる興奮は味わえるだろう。

しかし、ある一定の期間を過ぎれば、見慣れたものになってしまう。

自己満足の芸術は世間からはガラクタを思われるかもしれないし、

お金や名声にはつながらないかもしれない。

けれども、僕たちを幸せにしてくれるかもしれない。

まとめ

ドーパミンとは、快楽物質ではなく「報酬予測誤差」で満たされる。

いつもの雑貨屋で偶然置物にときめいたり、何度も通った道で偶然出会いがあったりと

思ってもみなかったことが起きれば、欲求は満たされる。

ドーパミンは情熱な愛にも反応する。

しかし、あのときの情熱は、長続きはしない。

目新しいがなくなり、何もかもがマンネリ化したせいだ。

そのために、欲求を満たしてくれるものを追いかけるようになる。

愛を長続きさせるには、H&N（ハウ＆ナウ）が必要になる。

H&Nとは、目の前にあることを体験したり感じたりすること

つまり愛の探索から愛の所有、つまり愛着を持つことだ。

そして、ドーパミンとH&Nを満たしてくれるものは想像と自らの手を

使う作業をすることだ。

作るものを想像し、計画を立て、それに向かって手を動かす。

ドーパミンは、未来を想像してくれるのには必要不可欠だ

しかし、ドーパミンを好き勝手にしてしまうと、もっと！を

求めてしまう。

終わることなくだ。

人生が続く限り、ドーパミンは出続ける。

幸せの第一歩としてドーパミンを知ることが大事になっていく。

本書の目次

はじめに　上と下

第１章　愛　恋愛から友愛へ
ドーパミンは快楽物質ではない
報酬予測誤差
身体の近く・遠く
ダークサイド
友愛をつかさどるH&N
ドーパミン停止がオーガズムをもたらす

第２章　依存症　「欲求ドーパミン」の駆動力
あなたの脳は誰が支配している？
欲求回路
人はなぜ幻影の世界に生きるのか
「ほしい」と「好き」
抑制できなくなる
急激な上昇
すさまじい反撃
幸福が逃げ去るわけ
性格や医師が弱くなくても
パーキンソン病治療薬のリスク
もっと、もっと、もっと
イージーアクセスと習慣
ビデオゲームをやめさせない仕掛け
欲求ドーパミンに対抗する

第３章　支配　「制御ドーパミン」の達成力
先を見越した戦略
粘り強さのもと
努力するかどうか
自己効力感
「代理的」関係、「親和的」関係
服従による支配
けっして満足できない人
ADHDの謎を解く
太りすぎと衝動性
ドーパミン良心はない
敗北しないための勝利
熱い暴力、冷たい暴力
感情を抑制し、危機を脱する
遠くから殺す方が簡単だ
自動運転車の問題
誘惑に抗うと…
意思力訓練マシン
ドーパミン対ドーパミン
動機づけ強化療法
認知行動療法
十二ステップ促進療法

第４章　創造と狂気　すごい発想が生まれる源
幻覚と妄想
サリエンシー
精神障害のショート回路
潜在抑制低下と芸術
モデル構築
メンタルタイムトラベル
知恵の基礎になる
モデルを壊す
活性化する脳の領域
脳を刺激して創造力を高める
創造と狂気が交わる場所
夢の培養テクニック
ノーベル賞科学者が芸術好きなわけ
いまここを犠牲にして
喜びの代償

第５章　政治　保守とリベラルの脳の違い
政治的傾向と性格
シリコンヴァレーの政治風土
ハリウッドからハーヴァードまで
変化に対応できる力
遺伝子による分断
政策か、慈善か
セックスを楽しめるのはどちら？
ヒッピーと福音派
もっとも効果的な武器
なぜリスク管理を誤るのか
脳の配線が違う
人を保守にするには？
道徳的判断を変える薬
移民への意外な反応
人をリベラルにするには？
政治と距離
政治家に向く人、向かない人
ドーパミンも政治も休まない
脳と権力

第６章　進歩　新しさを求め冒険する気質
人類の大いなる移動
冒険好きと７Rアレル
ドーパミンと移動距離
新しい性格様式に順応できるタイプ
どちらの仮説が正しい？
現代の移住
双極性障害
移民の多い国の遺伝子
アメリカは発揚気質の国
発明家、起業家、ノーベル賞受賞者
人間の本質
頭を掻くとき
どんな未来も現実ではない
ドーパミンが人類を滅ぼす？
核のボタン
地球を破壊する
人工知能が決める最善策
人口崩壊
何もせずに、すべてを体験する

第７章　調和　ドーパミンとH&Nのバランスをとる
生産性の高い不幸、幸福な怠惰
熟練の技
五感からのデータ
花とコンクリート
倍増するミス
マインドワンダリング
脳と手
幸せにはどちらも必要

著者からの注記
謝辞
注・参考文献・クレジット
解説

もっと！　愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学

続きはぜひ本書でお読みください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。